調査研究レポート(第3回) 「東京における2020年~2021年上半期の人口動向」(2)

東京都への転入・転出状況

 上記の人口推移は、東京都に住む人口の増減数(出生・死亡の自然増減を含む)であり、東京都への集中が進んでいるのか、分散に転じているのかまでは正確には掴めない。そこで、総務省住民基本台帳人口移動報告を用いて、東京都の転入・転出の状況を詳しく見ることとする。

2-1 2020年の転入・転出状況

 2020年の東京都の国内他道府県との転入・転出状況をみると、年間の転入者数は43万2930人、転出者数は40万1805人で、3万1125人の転入超過(日本人3万8374人の転入超過、外国人7249人の転出超過)であった。ただし、2019年の転入超過数8万2982人と比べると、その数は4割弱に低下している。

 月別にみると、5月に初めて1069人の転出超過を記録し、第2波が訪れた7月にふたたび2522人の転出超過となり、その後は3~4000人台の規模で転出超過が続いた。日本人・外国人別にみると、3~4月には外国人の転出超過が目立っていたが、7月以降は日本人の転出超過が大半を占めているのが特徴である【図2、表2】。

2-2 2021年上半期の転入・転出状況

 2021年に入り、1月、2月も転出超過が続き、3月、4月はコロナ禍以前であれば大きく転入超過となるところ、3月は2万7803人(2019年の3万9556人の7割程度)、4月は2348人(同1万3073人の2割弱)の転入超過に留まることとなった。5月以降はふたたび転出超過となっている【図2、表2】。

出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告」をもとに作成

【表2】 東京都の国内他道府県との転入・転出者・転入超過数の動向

出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告」をもとに作成

2-3 2021年3~4月の転入・転出の動き

 2021年3~4月に転入超過数が大幅に減少した要因について、年齢階級別にコロナ禍以前の2019年、コロナ禍第1波に見舞われた2020年と比較し分析する。

 これまでこの時期には、東京都に進学や就職などを要因として15~19歳、20~24歳、25~29歳の年齢階級が多く転入し、転入超過数に大きく寄与してきた。 2020年は、15~19歳の転入者数が大きく減少し、転入超過数が大幅に低下したのが目立っている(15~19歳の転入超過数:2019年1万878人、2020年6858人)。 また、30歳代、40歳代でも転入減、転入増となり、転入超過数の低下あるいは転出超過に転じている。前者は、初の緊急事態宣言によって多くの大学でロックダウンとなったことから、大学等進学者の転入が減少したこと、後者は会社などで東京都内への異動が制限されたことが要因と考えられる。 一方、2021年は、15~19歳の転入超過数は2019年とほぼ同様の値まで回復したが、20~24歳の転入者数が減少して転入超過数が低下している(20~24歳の転入超過数:2019年3万4817人、2021年3万1534人)。また、30歳代、40歳代では転入減、転出増の傾向が一層強くなり、転出超過数が大幅に拡大している(30歳代:2019年1117人の転入超過、2021年5233人の転出超過。40歳代:2019年1445人の転入超過、2021年2169人の転出超過)。大学等進学者の転入はコロナ禍以前に戻ったものの、新規就職での転入がやや低下したと考えられる。さらに、30歳代、40歳代の青壮年層(0~4歳、5~9歳の年齢階級の転出超過も拡大していることから子育て層とも言える)を中心に、東京都からの転出が大きく拡大したことが要因である。


出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告」をもとに作成