ご挨拶

一般社団法人 大都市政策研究機構 理事長  市川 宏雄

21世紀の大都市のこれからについて、政策形成にかかわる研究者、行政の側の意思決定権者、都市開発を担う事業者による共通の議論と協働の場は明確には組織としては存在してきませんでした。こうした問題認識とその課題の解決を目指して、2018年8月に大都市政策研究機構が設立されました。この機構では、わが国と世界の大都市に関する政策と計画、情報・資料を収集し、その分析・研究を行い、議論する場を設け、積極的な対外発信と提言を行います。地球規模で人口爆発が起きる一方で、先進国では少子高齢化が進行しています。今、求められるのは大都市の未来への確かな指針なのです。

ますます都市化の進む世界では、「都市圏」が国家にも匹敵する力と重要性をもって存在感を示しつつあります。都市に居住している人々の割合が急速に増加し、国際連合経済社会局が発表した World Urbanization Prospects『世界都市化予測』によると、世界の人口の半数以上(54%)である 39 億人が都市に居住しています。2050 年には世界の人口に占めるその割合は 66%に達すると予測されています。 特に、中規模の国家並みの人口を持つ巨大都 市がその重要性を増しています。現在、都市の人口の 半数近くが人口 50 万人以下の比較的小さな都市に居住していますが、およそ 8 人に 1 人(約 12%) は 1,000 万人以上の人口を擁する「メガシティ」(megacities)に居住しています。1,000 万人はスウェーデンやポルトガルの国家人口に匹敵する規模なのです。

現在、東京圏は人口が3700万人に近づき、先進国で最大規模の都市圏となっています。L.クラーセンは、都市化のプロセスはいずれ逆都市化の段階に移行し、拡大する都市圏は縮小に向かうと指摘しました。ところが、東京圏では都市圏の規模が縮小する一方で、依然として人口が増加しています。 E.ハワードの提唱による田園都市によって、良好な郊外の居住環境と効率的な都心との都市構造の形成を目指してきた大都市圏計画も、それが理想の姿なのかが問われ始めています。ロンドン、ニューヨーク、東京などでの都心部では、高水準の大規模都市開発が活発化しています。これからの郊外部と都心部の役割がどうなるのか、20世紀の都市計画の常識ではその答えが出せなくなりつつあります。