調査研究レポート(第2回) 「日本のコワーキングスペースの拡大」(速報版)

一般社団法人大都市政策研究機構 主任研究員 三宅博史


大都市政策研究機構では、「日本のコワーキングスペースの現状と課題」(第21回日本テレワーク学会研究発表大会・2019年7月13日~14日)にて、2019年6月時点での日本のコワーキングスペース施設数、サービスタイプ別分析などについて研究発表を行った。コワーキングスペースは、その後も施設数の拡大、提供事業者の多様化など大きな進展をみせている。本調査・研究レポートは、2021年2月時点までの施設データを加え、現在までの拡大状況について速報として紹介する。
→ 「日本のコワーキングスペースの拡大(2021年2月時点・速報)」(PDF)

コワーキングスペース施設数の推移

 前回のレポートでは、コワーキングスペースのポータルサイトである「コワーキング.com」(https://co-work-ing.com/)に登録されている施設情報をもとにデータベース化を行った。今回も、データの連続性から「コワーキング.com」の2020年8月時点、その半年後の2021年2月時点の施設情報をもとにデータベース化を図り、集計を行った(※)。

※2020年のデータは、前回から1年後の2020年6月時点とするところであるが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言による影響も考え、宣言解除後やや落ち着いた2020年8月6日更新時点のデータとした。2020年8月から半年後の2021年2月も2回目の緊急事態宣言の発出中であったが、飲食店の営業時短が主な対策であり、直接的な影響はないものと考え、2021年2月18日更新時点のデータを用いた。


 前回の2019年6月のデータに、2020年8月、2021年2月のデータを加えた施設数の推移をみていこう。

 全国の施設数では、2019年6月の799施設から、2020年8月で1062施設、2021年2月で1379施設へと、およそ1年で1.33倍、1年半で1.73倍の増加をみせている。増加数でみると、およそ1年で263施設、1年半で580施設増加しており、増加の割合がますます高まりつつある。

 地方ブロック別にみると、関東は、2019年6月の414施設(全国シェア51.8%)から、2020年8月には464施設(同43.7%)へと施設数は増加したものの、全国シェアは若干低下させている。この間、近畿が159施設(同19.9%)から225施設(同21.2%)、九州が44施設(同5.5%)から137施設(同12.9%)と施設数を増加させ、このほか中国、四国でも施設数を伸ばしたことが要因である。もっとも、その後の2021年2月には、関東が639施設(同46.3%)と、施設数を大幅に増やして再びシェアを上昇させ、北海道、東北、中部でもシェアを上昇させている【図表1・地方ブロック別】。

 都道府県別にみると、2019年6月から2021年2月までの施設増加数は、東京都(124施設)が大きく目立つが、その周辺の神奈川県(39施設)、茨城県(18施設)、埼玉県(14施設)、千葉県(10施設)でも着実な増加をみせている。大阪府(36施設)の周辺である兵庫県(18施設)、京都府(10施設)、愛知県(18施設)の周辺である三重県(7施設)でも増えつつあり、大都市圏全域で増加している状況にある。また、宮城県、岡山県、広島県、福岡県など各地方ブロックの中心県でも増えつつある。

 特筆すべきは、長野県、沖縄県など、非大都市地域でもコワーキングスペースが急速に伸びていることである。リゾート型テレワーク(ワーケーション)に対応したコワーキングスペースの立地が進みつつあることが分かる【図表1・都道府県別】。

 これらの推移をまとめると、コワーキングスペースは、大都市圏や地方ブロックの中心県などで着実に施設数を増やしつつある一方で、長野県、沖縄県のようなリゾート地を活用した県での立地も進みつつあると言えるだろう。



図表1:コワーキングスペース施設数の推移(2019年6月-2021年2月)

〇全国及び地方ブロック別


〇都道府県別

出典:コワーキング.com(2019年6月8日閲覧時点、2020年8月6日閲覧時点、2021年2月18日閲覧時点)に基づきデータ作成