調査研究レポート(第2回) 「日本のコワーキングスペースの拡大」(3)

コワーキングスペースの拡大状況(まとめ)

 2021年2月までの施設数の推移を踏まえ、得られた知見を以下に記す。

 ① 全国のコワーキングスペースの施設数は、加速度的に増加しつつある。大都市圏や地方ブロックの中心県など、ビジネス人口の多い地域で施設数を着実に増やしつつある一方で、長野県、沖縄県のような非大都市地域でも、リゾート型テレワーク(ワーケーション)に対応したコワーキングスペースの立地が進みつつある。

 ② 都市別にみると、東京23区が、2位の大阪市を大きく引き離して圧倒的な集積を得ている。大阪市、名古屋市、福岡市、京都市、神戸市などの大都市、地方ブロックの中心都市でも増加傾向にある。ただし、ここ最近では横浜市で増加数が多く、また宇都宮市、高崎市といった北関東の中心都市、藤沢市、町田市、鎌倉市といった東京圏郊外都市で増加数が目立っている。

 ③ 全国の約3割のシェアを占める東京23区内において集積が高いのは、港区、千代田区、渋谷区であり、この3区ではさらに施設数を増加させつつある。次いで中央区、新宿区が続くが、近年は新宿区での増加が目立つ。以前は、城西、城南地域の区での集積が目立っていたが、台東区、江東区でもその数が増えつつあり、都心及びその周辺地域の全域にわたって施設数が増加している。

 かつてコワーキングスペースは、主にクリエイティブな職種やIT系ベンチャー等を対象とした施設として捉えられてきたが、ここ最近では、モバイルワークやスポットオフィス、SOHO向けシェアオフィスなど、ビジネス全般における多様な働き方を支えるワークスペースとしての施設展開が図られ、その立地も拡大しているのではないかと考えられる。


<追 記>

 全国のコワーキングスペースの数は、2021年6月には1454施設(2021年6月7日時点)と、さらに増加をみせている。一方、2020年春以降の新型コロナウイルス感染拡大が、コワーキングスペースの立地展開に関しても影響を与えていると考えられるが、今回の速報ではそこまで分析するに至っていない。次回のレポートでは、2021年6月の最新データを用いたうえで、2019年6月以降2か年にわたる施設数の推移と、新型コロナウイルスの影響も含めた詳細な分析を行うこととしたい。