「大都市政策の系譜」第3回「コルビュジエの「輝ける都市」」(3)

「アテネ憲章」の提唱

 コルビュジエは、「輝ける都市」の計画理論をアルジェ、アントワープ、ストックホルム、バルセロナ、ヌムールに適用して計画案を提出したが、いずれも実現には至らなかった。しかしながら、「輝ける都市」の計画理論は、その後のCIAMの主要テーマとして取り上げられ、新しい世代の建築家たちの関心の的となっていく。

 1933年の第4回CIAM会議は、「機能的都市」をテーマにマルセイユ=アテネ往復間の洋上にて開催され、この会議の成果は、全95条からなる「アテネ憲章」としてまとめられる。それは、コルビュジエの強いリーダーシップのもとで作成され、彼の「300万人の現代都市」や「ヴォアザン計画」、「輝ける都市」など一連の都市計画構想の内容が盛り込まれたものであった。

 「アテネ憲章」では、都市は「太陽・緑・空間」を持つべきであるとし、都市の主な機能を「住む」、「働く」、「楽しむ(余暇)」、「往来する(交通)」の4つに分類して、「都市計画の原則」は、これらの機能を明確に分離し、その機能配置は住居を中心とした相互関係によって決定すべきであるとした。ゾーニング、隣棟間隔、グリーンベルト、歩車分離、高層化など近代都市計画の手法の多くは、「アテネ憲章」から導き出されている。

図:「アテネ憲章」の表紙(1943年版)
出所:ル・コルビュジェ著・吉阪隆正訳『アテネ憲章』

 「アテネ憲章」は、第二次世界大戦後の世界の都市計画に大きな影響を与えたが、1950年代にはCIAM内部でも批判が起こり、その後も、例えばジェイン・ジェイコブス(1916-2006)の『アメリカ大都市の死と生』(1961)などに見られるように、さまざまな立場からその機能主義に対する批判がされている。

(一般社団法人大都市政策研究機構 主任研究員 三宅 博史)


<参考文献>

 ル・コルビュジェ著・吉阪隆正訳『アテネ憲章』鹿島出版会、1976年
 日端康雄『都市計画の世界史』講談社現代新書、2008年
 ノーマ・エヴァンソン著・酒井孝博訳『ル・コルビュジエの構想-都市デザインと機械の表徴』井上書院、2011年
 佐藤健正『近代ニュータウンの系譜-理想都市像の変遷』市浦ハウジング&プランニング叢書、2015年
 ル・コルビュジエ著・白石哲雄監訳『輝ける都市』河出書房新社、2016年