エキュメノポリス
ギリシャの建築家・都市学者であるコンスタンティノス A. ドクシアディス(Constantinos Apostolos Doxiadis, 1917-1975)は、人間の居住空間を科学的方法で解析するエキスティックス理論(Ekistics:人間居住科学)を打ち立て、そのなかで「エキュメノポリス」(Ecumenopolis:世界都市あるいは惑星都市。古代ギリシャ語のエキュメノ(人の住む世界)とポリス(都市)をつなぎ合わせた造語)の概念を提唱した。
世界中の爆発的な人口増加と都市への人口集中は、新たな人間居住空間の建設を要求しているが、静態的な性格をもつ「過去の都市」では、都市成長が中心部、住宅地域の破壊をもたらし正常な発展を阻害する。「未来の都市」は、動態的な性格をもち都市発展を可能とする「ダイナポリス」(Dynapolis:ダイナミックな都市の造語)を形成させ、都市中心部が軸に沿って自由に拡大し、①一方向への発展、②垂直軸体系上の発展、③垂直軸体系上及び六角形ハイウェイ・パターン状(最も経済的な構造)など、幾何学的な法則に従って発展段階をたどるべきとの独自の都市形態論を提案した。
そして、世界の総人口が年平均2%で増加すれば、21世紀終わりには200~250億人に達し、食料供給のために農業居住社会は17億人、60万km2、都市居住社会は180億人以上、1500万km2を占めるだろうと推定し、こうした都市の成長によって、最終的にはメガロポリスから、地球上のすべての住民を含む地球規模の単一都市である「エキュメノポリス」に至ると予測した。
ドクシアディスは、エキスティックス理論において、エキュノメポリスを人間居住空間の単位の最上位階層として位置づけ、その進化は避けられないものであり、エキュメノポリスを人類にとって住みやすく快適な空間にする計画を立てなければならないと主張した。
また、1963年から1975年までの12年間にわたり、世界を代表する学者、実務家、建築家、都市計画家などがギリシャに集まり、人口爆発に伴う世界各地の諸問題への解決や、地球上における人類の居住に関する問題を議論する「デロス会議」も主催し、その成果は「デロス宣言」としてまとめられている。