コワーキングスペース提供事業者の動向
これまでみたように、2019年から2021年にかけてコワーキングスペースは急速に施設数を増やしたが、この2年間、どのような施設展開が図られてきたのか。その動向をコワーキングスペース提供事業者別(主なもの)に示したのが【図表4-1】である。
まず、外資系3社による全国的な施設展開の加速が目立っている。WeWork、サーブコープは、東京23区内の施設数を増やしつつ、大阪市、名古屋市のほかに横浜市、福岡市などで施設展開を進めている。また、日本リージャスは、貸会議室大手TKPによる子会社化を機にサービスオフィス、コワーキングスペースの再構築を図っており、リージャス、スペーシズ、オープンオフィス等のブランドで各都市に多くの施設を設置させている。
コワーキング事業者をみると、シェアスペースで共に働くスタイルの従来型のコワーキングスペースはおおむね横ばいの傾向にある。一方、THE HUB、BIZcomfortを例とするサービスオフィス(レンタルオフィス)を主体としたコワーキングスペースは施設数を大幅に増加させている。
大手不動産会社も、東急不動産が運営するBusiness-Airport(ビジネスエアポート)をはじめ、それぞれ施設数を増やしているが、その設置エリアは東京23区内の都心部を主としている。一方でコスモスイニシアが運営するMID POINT(ミッドポイント)のように、職住近接を意識した施設展開(横浜関内、川崎、大塚、武蔵小杉、目黒不動前)の例もみられる。
さまざまな異業種からの参入拡大があったのも、この2年の特徴である。カルチュア・コンビニエンス・クラブは、全国のTSUTAYA(蔦屋書店)でコワーキングスペースを展開し、Web制作・システム開発のLIGから独立したいいオフィスは、フランチャイズも含めて全国展開を進めている。
カラオケパセラやリゾートホテル・カプセルホテル等を運営するニュートン・サンザグループは、パセラブランドでコワーキングスペースを展開しつつ、カプセルホテル(安心お宿)を活用したドロップイン事業も手掛けている。
メガネ企画・販売のジンズ、パルコ、紳士服販売の青山商事なども、新規事業としてコワーキングスペース事業に乗り出している。オンデマンド印刷のアクセアは、大都市の交通結節点等を中心にドロップイン専用でカフェスタイルの「アクセアカフェ」の設置で伸ばし、大東建託リーシングは、都市近郊にリモートワーク、勉強、楽器練習などに使える個室中心のフレキシブルスペース「いい部屋Space」を展開している。
また、以前からホテルやゲストハウスに併設するコワーキングスペースは存在していたが(.andwork、おもてなしラボ(佐倉市)など)、シティホテルやリゾートホテルで、レストランやラウンジ等を活用して新たにコワーキングスペースを設置する例が増えている【図表4-2】。
地方では、各地の自治体で、企業誘致やU・Jターンなど移住者誘致を目指してコワーキングスペースやリモートオフィス開設に積極的に乗り出しはじめ、自治体主導でこれらの拠点整備を図る例が目立っている【図表4-3】。