一般社団法人大都市政策研究機構
主任研究員 三宅 博史
★大都市政策研究機構では、「日本のコワーキングスペースの現状と課題」(2019年12月)において2019年6月時点での日本のコワーキングスペース施設数、サービスタイプ別の分析等の研究発表を行い、「日本のコワーキングスペースの拡大(速報版)」(2021年6月)において2021年2月時点までの拡大状況について報告した。本調査・研究レポートでは、当初、2021年6月の施設データ(1456施設)を追加し、2019年6月から2年間の動向を報告することを予定していたが、その後の施設数の増加も著しく、最新データでの分析を要すると考えたため、さらに2021年12月の施設データ(2042施設)を加え、2年6か月の拡大状況について分析・報告することとした。
→ 「日本のコワーキングスペースの拡大」(2021年12月版)(PDF)
コワーキングスペース施設数の推移
本調査・研究レポートのコワーキングスペース施設数は、コワーキングスペースのポータルサイトである「コワーキング.com」(https://co-work-ing.com/)に登録されている施設情報をもとに、2019年6月、2020年8月、2021年6月、2021年12月の4時点における施設のデータベース化を図り、集計を行ったものである。
* * *
はじめに、2019年6月から2021年12月に至る4時点での施設数の拡大状況をみていこう。
全国の施設数は、2019年6月の799施設から、2020年8月の1062施設、2021年6月の1456施設、2021年12月の2042施設へと、2年6か月で2.56倍の増加となった。増加数でみると、2019年6月から2020年8月にかけて263施設、2020年8月から2021年6月にかけて394施設、2021年6月から12月の半年間で586施設であり、その増加割合は急速に高まっている。
地方ブロック別にみると、南関東は、2019年6月の397施設(全国シェア49.1%)から、2021年12月の820施設(同40.2%)と施設数は着実に増加しているが、全国シェアは低下しつつある。この間、関西も154施設(同19.3%)から326施設(同16.0%)へと全国シェアは低下している。一方、九州・沖縄が44施設(同5.5%)から137施設(同12.9%)と施設数、全国シェアとも大幅に伸ばし、東海でも53施設(同6.6%)から162施設(同7.9%)へ、東北でも42施設(同5.3%)から118施設(同5.8%)へと大きな増加がみられる。そのほか、北海道、北関東、甲信越、中国、四国でも施設数、全国シェアとも伸ばしている【図表1・地方ブロック別】。
都道府県別にみると、2021年12月の施設数は、東京都(611施設)が大きく目立ち、その周辺三県の神奈川県、埼玉県、千葉県、さらに北関東の茨城県、栃木県、群馬県でも着実に増加している。大阪府(156施設)とその周辺府県である兵庫県や京都府、そして愛知県(81施設)とその周辺県である静岡県や三重県でも増えつつあり、大都市圏全域での増加が著しい。北海道(56施設)、宮城県(38施設)、広島県(30施設)、福岡県(78施設)など各地方ブロックの中心県でもその数が増加している。
また、長野県(41施設)、沖縄県(45施設)などの非大都市地域でも施設数が急速に増えつつあり、リゾート型テレワーク(ワーケーション)に対応したコワーキングスペースの立地が進みつつあることが分かる【図表1・都道府県別】。
これらの推移をまとめると、大都市圏や地方ブロックの中心県などで、コワーキングスペースは着実に施設数を増やしつつある一方で、長野県、沖縄県のようなリゾート地を活用した県での立地も進みつつあると言える。
図表1:コワーキングスペース施設数の推移(2019年6月-2021年12月)
〇全国及び地方ブロック別
〇都道府県別