「大都市政策の系譜」第9回「クラッセンの都市発展段階仮説」(3)

2020年以降の東京大都市圏の新たな人口の動き

 前節までの検証は、国勢調査による人口データを基にしており、現時点(2026年2月時点)では2020年までの動向しか見ることができない。直近の状況を得るため、住民基本台帳による人口データを基に2025年までの人口動向を検証したものが、【図表4】である。ここでは併せて、現在増加しつつある外国人住民の動向も見るため、日本人・外国人別の人口分析を試みる。

 2015~2020年の5年間の人口動向を見ると、中心都市の人口増加率が郊外地域を上回る「都市化(タイプ2)」の段階にあるが、この5年間の外国人の人口増加率は中心都市、郊外地域とも40%前後にも達し、日本人の人口増加率をはるかに上回っている。

 その後、2020年に端を発するコロナ禍により、2021~2022年にかけて中心都市の外国人人口が大きく減少し、東京大都市圏全体の人口は横ばいないしはマイナスの状況となる。

 2023年頃からは、コロナの影響も減退し、東京大都市圏全体の人口はふたたび増加に転じる。これは、コロナ前を上回る外国人の大幅増が支えているのであり、日本人人口に限れば減少の一途となっている。日本人人口は、中心都市ではかろうじて微増傾向にあるが、郊外地域では大幅な減少を続けている。

 したがって、2020~25年の5年間について日本人人口のみでクラッセンのモデルに当てはめると、中心都市では人口増加、都市圏全体では人口減少となる「再都市化(タイプ8)」の段階に位置している。

図表4:東京大都市圏の日本人・外国人別人口推移と増減率(2015~2025年)
出典:総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態および世帯数調査」に基づき作成
注:住民基本台帳に基づく人口、は各年1月1日時点である。


 さらに、この「再都市化」は、クラッセンが想定した「逆都市化」を経て「都市化」に向かう段階での「再都市化」ではなく、「逆都市化」に向かう段階での「再都市化」と捉える方が妥当であろう。

 東京大都市圏における日本人と外国人の人口増減数(自然増減、社会増減別)を示したものが【図表5】である。

 日本人は、少子高齢化の進行により、出生者数より死亡者数が上回る「自然減」の状況が加速し、東京大都市圏全体において2024年時点で自然減19.3万人と急速に拡大し続けている。特に郊外地域では自然減16.2万人で、社会増6.6万人を加えても9.6万人の大幅な人口減となっている。一方、中心都市でも自然減が加速しつつあり、自然減3万人であるものの、社会増5.5万人が加わることで、かろうじて2.5万人の人口増となっている。

 しかし、将来的に中心都市での自然減がさらに進むとともに、全国規模の人口減少の進展により東京への転入者数が減少していくことになれば、中心都市でも人口減に転じることは容易に予測される。つまり、日本人人口のみで見れば、中心都市、郊外地域とも人口減少となる「逆都市化」に突入する可能性が極めて高いと言えるのである。

図表5:東京大都市圏の日本人・外国人別人口増減数(日本人:自然増減・社会増減別、2015~2025年)
出典:総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態および世帯数調査」に基づき作成
注:表内の数値は、当年1月1日時点から翌年1月1日時点までの1年間の人口増減数である。


 ここまで検証してきたように、将来的には東京大都市圏でさえも、日本人人口のみでは中心都市、郊外地域とも人口減少となる「逆都市化」に突入し、大都市圏全体の衰退を迎えることになる。近年、とくにコロナ禍以後に外国人人口が急速に増加し、それをあたかも「外国人問題」と称して扱う論調も一部には見受けられるが、少なくとも直近の東京大都市圏の人口動向から考察するに、日本人の急速な人口減少を補うかのように外国人が転入・増加することで、大都市圏の現状の人口を維持し、都市機能や経済・産業が支えられているように見える。

 今後は、東京大都市圏をいかに維持・発展し続けるかといった観点から、日本人・外国人双方の人口動向を冷静に分析することがますます必要となっていくのではなかろうか。

(一般社団法人大都市政策研究機構 主任研究員 三宅 博史)


<注>

 ※1:高橋伸夫ほか(1997), pp.35-38, 松本康(2022), pp.103-105
 ※2:松本康(2022), pp.105-111

<参考文献>

 山田浩之著『都市の経済分析』東洋経済新報社, 1980年
 山田浩之著「都市化の経済分析・序説」『季刊 現代経済』 No.42, 1981年
 吉岡健次・崎山耕作著『大都市の衰退と再生』東京大学出版社, 1981年
 山田浩之他編著『都市と土地の経済学』日本評論社, 1995年
 高橋伸夫・菅野峰明・村山祐司・伊藤悟著『新しい都市地理学』東洋書林, 1997年
 松本康編『都市社会学・入門〔改訂版〕』有斐閣, 2022年